IMG_4979b-1024x576つい最近まで、二次元上での創作物だと考えられていた「男の娘」。しかし今では、SNSや同人イベント会場で、二次元上の創作物に引けをとらない、三次元の可愛い男の娘たちを見ることができます。そんな「男の娘」を世間一般に認知させたのが、ゲッカビジン!誌上で『自画撮り戦国時代』を連載し、セクシー女優時代には“男の娘”でありながら、単体女優という快挙を成し遂げた、作家兼モデルの、大島薫さん。

今回スタートするのはそんな大島さんが、自画撮り以外の手段で、美意識や価値観にこだわる現代女子に焦点を当てお話を伺っていく、対談の旅。記念すべき第一回目のお相手は、ハヤカワ五味さんです。

昨年、バストが小さい女性に向けたランジェリー「品乳ブラ」を発表し、下着業界で一大センセーションを巻き起こした新鋭ブランド『feast』。そのデザイナーであり、ブランドを展開する「株式会社ウツワ」のCEOを兼任するハヤカワさんは、なんと現役の女子大生。自身のツイッターでは、喜怒哀楽裏表のない明け透けな自画撮りも公開する、今どきの女の子の顔も持っています。そんなハヤカワさんとの対談を、今回から全三回に分けてお届けしていきます。

ファッション、お化粧、そして自画撮り────そういったものを利用することで、コンプレックスが自信に変わる

大島薫さん(以下、大島):ハヤカワさんといえば「品乳ブラ」で知られる『feast』のデザイナーさんというイメージが強いのですが、ブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?

ハヤカワ五味さん(以下、ハヤカワ):私は胸が小さいことがずっとコンプレックスで、その解決策として胸の小さい人向けの「品乳ブラ」をつくることにしたんです。胸が小さい女性にも下着を選ぶ楽しみを提供したくて。

大島:なるほど。『feast』はハヤカワさんの「胸が小さい」という悩みからできたブランドということですね。胸の小さを解決するということですが、『feast』の品乳ブラは「小さい胸を良く見せる」のと「小さい胸を隠す」だったらどちらに当てはまるのですか?

ハヤカワ:胸が小さくてよかった、小さいから似合うと思ってもらいたいので「小さい胸を良く見せる」ほうですね。私は自身のコンプレックスが大きいので、それを今後もブランド展開に活かしていこうと思ってるんです。

大島:今後どのような展開を考えているのですか?

ハヤカワ:直近の話になってしまうのですが、年内に10~12歳くらい女の子に向けた下着を出そうかと。

大島:もうすぐじゃないですか!なぜその年代に向けての展開を?

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ハヤカワ:なんで私の胸はこんなに小さいのか真剣に考えた結果、一番最初にブラジャーを買うきっかけがつかめなかったのが大きかったのかなって。親にずっと言い出せなくて、初めてブラジャーをつけたのは高校3年のときなんですよ。だからもっと親に言い出しやすい、ブラジャーの一歩手前のものをつくりたいと思ったんです。

大島:コンプレックスの話がありましたが、コンプレックスが大きいとおしゃれを楽しめなかったり、それこそ今流行の自画撮りも苦手に感じてしまうこともありますよね。コンプレックスのある子たちはどうやって自分に自信をつけていけばいいと思いますか?

ハヤカワ:化粧品や服とかって、買うだけで可愛くなった気になれるしポジティブな気持ちになれますよね。私はそうした「物」の力ってすごいなって思ってて。だからそうした買い物だったり、お化粧だったり。あとは自画撮りで自分を第三者的な視点で見ることも大事ですよね。そういったものを上手く利用することで自信につながるんだと思います。

大島:ハヤカワさんご自身も自画撮りをしたり、様々なメディアに出たりと露出が増えていますが、やはり見た目には気を遣われたりするんですか?

ハヤカワ:自分の好きなブランドのデザイナーさんがかっこよかったり、可愛かったりすると「買いたい」と思うじゃないですか。だから、デザイナーとして見た目の影響力は意識しますね。

職業にしろ性別にしろ、今後10~20年でマイノリティが、当たり前になるような影響を与えたい

大島:見た目の影響力ということですが、ハヤカワさんは僕を『feast』のモデルに使ってくれましたよね。だけど、当時僕はセクシー女優でしたし、「起用して大丈夫なの?」という驚きがあったのですが、モデル採用の基準ってありますか?

ハヤカワ:最近の若い子はグラビアの子やセクシー系の子に対しての抵抗がなくなってきていますよね。周りにそういう人が増えてきたのが関係していると思うのですが。それこそ友達がキャバクラで働いているとか。世間がそうした職業に対して寛容になってきているのだと思います。

大島:若い子中心のブランドだし、職業や性別はあまり気にしないということですか

ハヤカワ:そこまで気にしていないですね。それより見た目の見栄えの方が大事です。それと、私の中での目標であまり公表していないのですが、私の周りには同性愛者や性同一性障害の方が多いのですが、今後10年や20年の単位でそれが世間で当たり前になるような影響をかけられたらと思っているんです。それもあって男の娘の大島さんを起用したら思っていた通り批判はなくて、それどころか多くの方から「可愛い」って言ってもらえたんですよね。

大島:じゃぁ狙い通りということですね。これからもみんなが予想もつかないような方を起用していくんですか?

ハヤカワ:見た目はこれまで通りのブランドですが、少しずつそういう方を起用して、暗示をかけるというか、世間にとってそれが当たり前になってくれたら嬉しいです。性別関係なくファッションを楽しめるようになるといいですよね。IMG_4925b

 

自画撮りを通して女の子の美意識は、今後「本質」から「演出」へ寄っていく

大島:職業や性別より見た目が大事という話がありましたが、ハヤカワさんは自画撮りの活動をしている女の子に対してどう感じていますか?

ハヤカワ:私も中学3年~高校1年の頃は自画撮りから始めてモデルをやっていたんです。だから自画撮りをしたり、そこからモデルを目指してみようと考える女の子の気持ちがわかるんですよね。

大島:それは初めて知りました!

ハヤカワ:私はモデルを目指している女の子にもたくさ出会ってきたのですが、中には自画撮りを通して上手に自分を世間に広めている子たちがいるんですよね。それってすごいなって。写真はフィルターを通すから演出をかけやすいし、「自分」を伝えやすいのが良いですよね。

大島:自画撮りすることで身近に感じてもらうこともできますよね。

ハヤカワ:私の場合SNSをやっていると「本当にいるのかな」って思われてしまうことが多いんです。SNSだと個性が強いほど架空の人物感がでてしまうっていうか……。

大島:面白いパーソナリティーだと特にそう思われてしまいますよね。それを防ぐためにハヤカワさんが自画撮りでこだわってることはありますか?

ハヤカワ:親近感を持ってもらえるように意識しています。だから適当に撮ったものとか、可愛くない写真とかもアップしますね。自画撮りだと洋服とか自分の見せたいところを自分で選べるので「その時の自分」を的確に伝えられるんです。

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大島:僕はラフな写真よりキレイな写真の方が良いのかなって思って場所にこだわったり、一眼レフのカメラを使って撮ることもあるんです。プロっぽく見せたいというか……。ハヤカワさんはもっとライトな方がいいと思いますか?

ハヤカワ:凝り固まったものだと、大企業と変わらなくなってしまいますよね。その差別化として、私の場合はラフな写真を撮って身近に感じてもらうように意識しています。「私もみんなと同じ悩みを共有しているんだよ」っていうのが伝わるように。もっと身近な女子として感じてほしいんです。

大島:SNSを通して自分を広めるというか、注目を浴びるためのコツというのはあるんですか?

ハヤカワ:個人的な意見なのですが、ツイッターでバズるのはメンション(「@ユーザー名」を含むツイート)されるようなことをつぶやいた時ですね。「品乳」がバズったのも、女性がみんな自分のカップ数を言いたいからだと思うんです。

大島:その情報に絡めた自分事って発信しやすいですよね。誰にでも自己顕示欲ってありますし。

ハヤカワ:そうなんですよ。だからカップ数や脚のサイズ、服のサイズとかだと大抵バズります。男性はそれにちゃかしを入れる感じで広がっていきますね。

大島:1回のつぶやきだけで完結させずに、そのあとみんなが触れることを入れるって大事ですよね。

ハヤカワ:自分の情報を発信したいという気持ちを刺激するというか。つぶやきを見た人も「自分のほうが知識がある」というのをきっと言いたいと思うので、その知識を引き出せるような内容をつぶやくと良いかもしれないですね。たとえば「これがわからない」「良いチークを教えてほしい」とか。

大島:僕もツイートする時、わざと間違った漢字なんかを一ついれることがあるんですよ。そうすると、みんなリツイートした先でそれを言いたいがためにバズりやすいんです。自画撮りを広めたい子たちはそういうのもうまく利用するといいですよね。

ハヤカワ:より自己プロデュースをするための方法をSNSで探していくのは大切ですね。

大島:ツイッターなどのSNSが普及してきていますが、10代~20代女子の美容に関する価値観は今後どのように変化していくと思いますか?

ハヤカワ:これまで見た目に関しては家族や友達など、自分のことを良く知る親しい人達からの言及に限られていましたが、今はSNSなをど通して自分のことを良く知らない人たちからも色々と厳しい意見を投げかけられたりしますよね。だから、今後は本質よりも「自分をどう見せるか」という演出のほうに美意識が寄ってくると思うんです。

大島:今はSNSを通して有名人でなくても自身のツイートが拡散される時代ですもんね。そういう方達のを見ていると、つい自分も料理の写真1枚撮るのにもこだわってしまったり……。

ハヤカワ:今は自分の演出を通して、素人でも有名になれる時代ですものね。だからこそ「リツイート」や「いいね」の数にこだわってしまう事もあるかと思いますが、自分のやりたいことを伝えるためのツールとして自画撮りやSNSと上手く付き合っていけるといいですよね。

(つづく)

hayakawa_pro[プロフィール]ハヤカワ五味
1995年8月21日東京都生まれ。株式会社ウツワ代表取締役兼自社ブランド『feast』デザイナー。高校1年生の頃より「ハヤカワ五味」名義でアクセサリーやタイツをデザイン、販売し、キリトリ線ストッキングや木目調ストッキングがTwitter上で話題になり、メディアで取り上げられ、昨年は品乳ブラで業界の話題を独り占めにした。多摩美術大学に通う、現役の美大生でもある。

 

 

 

oshima_p[プロフィール]大島薫
純粋な男性でありながら、男の娘として大手AVメーカーと専属契約をした元AV女優。現在はタレントとして活動中。ヴィレッジヴァンガード、シンデレラバスト専用下着ブランド「feast by GOMI HAYAKAWA」ではモデルとしても抜擢されており、GAP原宿フラッグシップ店での「OUT IN JAPAN」プロジェクトでは、多くの著名人と並び男の娘として大々的に紹介された。作家としての執筆活動も熱心に行っている。

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